ボケと突っ込みのマルセイユ

 アテネ、ナポリにも共通する、もしくはそれ以上のノリのあるマルセイユ。
 縁があってマルセイユ市の現代美術館で働くことになった湯山ななえの仕事ぶりを見ようと、ベルギーの帰りに3日間だけ立ち寄った。
 ブリッュセルでは雨の日が多く、そろそろ冬の気配だったが、南に飛ぶに連れて青空が広がって、降り立つとそこは、まだ夏を感じる日差しがあった。
 空港からは、ナベットという市内の中央駅とを直結しているバスで向かい、駅から旧港まではタクシーに乗った。映画「タクシー」の舞台がこの町であることが、そのタクシーのえぐれたボディーから理解できた。ナポリのタクシーも激しいが、こちらもなかなか引けを取らない。ただ、ナポリより良いのは、いちいち価格交渉をしなくても良いところだ。ホテルは旧港の西側に立つvieux portで、部屋の窓からは港が一望できる。

 現代美術館へ向かった。繁華街からは少し離れたところに位置していて、バスに乗らないと行けないので、観光客にはあまり知られていないらしい。美術館は、こじんまりとした建物で現代的なシンプルな建物だが、屋根の形状が変わっているのと展示室が割と小さく区分けされているので、展覧には使いにくそうだった。館長をはじめ、様々なセクションの人の紹介を受けた。日本とは違って役職とは無関係の個人対個人の対等なつきあいが少しうらやましい。彼女も外国人であるからというアドバンテージは一切なしに仕事をしている。
 展覧会の方は主にヨーロッパの若手を紹介するグループ展だった。それぞれの作品の規模がそれほど大きくなかったので、少し物足りなさを感じた。
 美術館を後にして、夜はフランスの各地からの特産品などを展示する見本市に出かけた。
湯山がマルセイユに来た初日にルームメイトと飲みに行ったカフェで知りあった、サシャというおじさんの声かけで年齢層に幅のある人たちが待ち合わせの場所に来ていた。
 古く(2500年以上前)から港町だったマルセイユでは、カフェ文化が色濃く根強い。お互い自分は安全な人間であることの意思表示が生み出したのかもしれないが、みんな気さくに話しかける。日本で最近流行りのカフェとは、ちょと違う。私の短い滞在でもその人々のコミニュケーションとしての活気と、パスティスを堪能した。
 夜遅く湯山とルームメイトの住むアパートに寄った。とても立派なアパルトマンの借り主のメラニー嬢はドイツ人で、この街に1年前に来た。いろいろな街に移り住みながら人生を送るのが好きだという。私には無い考え方なのでとても魅力的に感じた。
 そして、最近もう一人のルームメイトに加わったタムタムは、タヒチ育ちというフランス人で現在デザインの仕事をしている。彼らはとても話好きで夜遅くまで、バニラ風味のラムを飲んだ。
 翌日はタムタムの運転で、海に行くことになった。市街から15分ほど走ると、もうそこには別世界のリゾートがあるのがマルセイユだ。私たちはカシスというカナル岬の入り江に行った。
朝市で買った新鮮な食材でビクニックを楽しんだ。まさしく透き通る海と照りつける太陽。大都市の近くの海がこんなにも奇麗なのには、理由がある。奇麗な海を汚さないための様々な規制や人々の努力がこのリゾートを残して来た。もしも、大阪湾に透き通るリゾートがあれば、と思うと考えさせられる。人生を楽しむイロハを教えられるような街である。
 この日の夜は、街の中心であったお祭りに出かけた。ニューヨークで言うと昔のソーホーみたいなところで、あたこちコンサートをやっている。道行くと知った人と出会い、あいさつをして世間話をするのでなかなか目的地に着かない。昨晩は見本市でケバブだったので、この日はレストランで食べることにした。
 その後、また別の友達から、レゲィのコンサートに行かないかという誘いを受けたので、11時ころから車で繰り出すことになった。マルセイユ・オールスターズと題された倉庫街のステージでいくつものグループが同時にレゲィやスカを爆発的にやっていた。一緒に出かけたモームとアランの友人がこの日のトリで出演する前に現れ、マルセイユ流のギャグを連発してくれて、私もいくつか練習した。
 真面目な顔をしていて、急に目が合うと「ジャダール!(j’adore!!)」(愛してる)と両手でこぶしを振り上げて叫ぶのが、その日のお気に入りだった。この乗りにシラケているとマルセイユでは仲間外れだ。大阪に似ている。コケルところを間違えてはいけない・・・・。
 最期の日は、日曜日だったので一人で近くにある島にでかけた。イフ島とフリウル島だ。
旧港からわずか15分でイフ島に着く。イフ島は、監獄として使われていた跡が残されていて、小さい島だがいろいろ見て回ることかできる。その後、フリウル島へ行って、裏手のカナルに行って海を見ながら、何もしない時間を過ごした。夕方には旧港にもどって旧市街を散歩した。昔風、京都の路地のような密集した住宅街がある。
 夜はヴァロン・デゾフという小さな港にあるレストランで海の幸をいただくことにした。ここの海岸からは、イフ島などが見え、地中海に沈む夕日が美しい。さらに、このためにマルセイユに来たと言っても良いくらい貝もワインも美味だった。が、少し生ものをふんだんに食べ過ぎたかもしれない・・・。
 タムタムはパリへ仕事に行ってしまったので、湯山とメラニーの三人での晩餐で私の短い滞在(夏休み)は終った。

2002年頃からブログ的なものを書いていたらしい・・。
現状多分これが一番古そうです。2004年までに少しだけあります。
ちなみにこの時の写真はフィルム撮りです。
ブリッュセルの束芋の展覧会の取材(その様子はoimoに収録)の後に立ち寄ったマルセイユでしたが、都会の近くに残す自然こそがリゾートだと感じた旅でした。

oimo tabaimo -2003- 束芋 from Ufer! Art Documentary
oimo tabaimo -2003-
日本語(English Subtitles、French Subtitles)
束芋のドキュメンタリー第二弾。内外の多くの展覧会に参加して世界へ羽ばたき、26歳の若さで出身大学の教授に就任した束芋。現代日本の日常風景をモチーフとすることが多い彼女は、社会をどのように観察し制作に取り組んでいるのだろうか。 本作は、2001年に横浜トリエンナーレへ最年少で参加し話題になった「にっぽんの通勤快速」をはじめ、観客参加型の作品である「にっぽんの御内」や、「お化け屋敷」など近作の紹介と束芋へのインタビューで構成されている。子供の頃に描いた絵を見ながら語る束芋や、学生の時に制作した「にっぽんの台所」の前身となる作品、海外での展覧会の設置風景なども収録されている。

出演・束芋  監督・岸本 康
本編映像34分

Tabaimo is a contemporary artist who makes installations using computer-generated animation. Her animated works are derived from her drawings. Since her 1999 graduation piece, Japanese Kitchen, caught the attention of the art world, she has become an internationally well-known artist and has continued creating installations. At the age of 26 she assumed the post as professor at University of Art and Design, Kyoto and she took part in the Sao Paulo Biennale and the Yokohama Triennale. Such achievements at a young age have resulted in turning her into a legend.

にっぽんの通勤快速
Japanese Commuter Train  2001
横浜赤レンガ倉庫(横浜トリエンナーレ会場)

ユメニッキ・ニッポン
dream diary -NIPPON 2002
水戸芸術館現代美術ギャラリー

にっぽんの御内
Japanese interior  2002
ベルギー王立美術館(ブリュッセル)

お化け屋敷
Haunted House  2003
康ギャラリー(東京)

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