ピピロッティ・リスト@原美術館

 ピピロッティ・リスト(Pipilotti Rist)。いつかは会いたいと思っていた作家に出会えた時は幸せなもんだ。
 先週から、原美術館の展覧会のテクニカルを手伝った。横浜で12月のグループ展に参加する束芋の展示の機材確認をしたあと、火曜日に原美術館に入った。同じ日から、ピピのテクニカルを担当するケーテの指示のもとに展示作業が始まった。ピピの作品は、一見簡単に展示している様に見えるものもーあるのだが、実は違う。入念に計算されて作られ、繊細に展示されるのだ。映画的なものから、光との出会いを楽しむまで様々な工夫が施されている。

 

 私の「スイス」というイメージは、やはり草原から見るアルプス。そう、ビビはそんなハイジの様な環境で育った。私が以前ナポリの映画祭で見た彼女のドキュメンタリー(スイスTV製作)の中には、その美しい山と、彼女の家族が登場する。お父さんが、ほんとに真面目な感じで「ピピは小さい頃から変っていたんですよ。」と、草原の岡に座って、ぽつりと話すシーンを思い出す。彼女はその草原でスイス国旗を持って何かを叫んでいる。これ以上ない自然と澄んだ空気の中で叫ぶ、彼女の自由な感覚を感じる事が出来た。そして、いろいろな美術館で彼女の作品を見るにつれて、彼女についてとても興味が募った。

  「あとちょっとだけ、赤くして。」彼女の映像へのこだわりは、考えていた以上にオリジナリティーがあって、かつ繊細で、普通なら映像を引き立たせるために黒く塗る壁も白く、スピーカーやケーブルも白なのだ。彼女の思い描いたインスタレーションはこうした、デリケートなこだわりから構築された世界だ。
  彼女の技術スタッフのケーテは、緻密な作業と完璧な完成を目指すことを楽しんでいる様な、とてもスイス人的な人だった。振り返って考えるとピピもすごくスイス人的かも知れないが、いったいピピロッティは、どうしてそんなに自由なオーラを発するのだろうか。トイレの作品が完成した時にチェックしようとしたら、自ら試していて、トイレの中から、「ちょっと待って」と言われたり、「こんな感じて見てもらえるとベストなんだけど」と、電気スタンドの作品を自分の太股に写してみたりと、とっても真面目であり、人をいたわる感じのパーソナリティーの中に、彼女の冗談ではない、素の面白さをたくさん見せつけられた。彼女はいたってまじめなのだ。

 かつてビデオアートと言われた様なテイストをなんとなく引き継いでいるように見える作品は、少し違う角度から構築された物であって、それが今、私たちにとても刺激的なメッセージを与えてくれるのかも知れない。楽しみにしていた、メイド・イン・スイスは、とても堪能させてくれる展覧会に仕上ったと思う。(京都に向かう新幹線の中で。)
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2018追記
この展覧会がきっかけで、丸亀、金沢、京都の展覧会も手伝う事になりました。金沢21世紀美術館は展示室のトイレには、作品が常設されており毎日動いているので、何年かに一度メンテナンスに伺っています。


実はOUR MUSEUMの中にピピロッティのパリ市美術館での展示が少し出てきます。インスタレーションが2部屋ありました。

OUR MUSEUM (あなたにとって美術館とは?) 京都市美術館/パリ市立近代美術館 from Ufer! Art Documentary on Vimeo.
OUR MUSEUM
日本語/English Subtitles/French Subtitles/ 4:3

「美術館の空間が私に与えたものは何なのか。」
これは私が長い間考えて来た素朴な問いです。
私は子供の頃、よく美術館に連れられ出かけました。その思い出は、大きな展示空間や大きなドア、巨大な部屋です。子供の頃の美術館の記憶には美術作品はありません。この経験が「OUR MUSEUM」を作るきっかけになりました。
この作品では、京都市美術館、パリ市立近代美術館の創設からの歴史を振り返ると共に、ジュ・ド・ポム国立現代美術ギャラリー、パレ・ド・トーキョー、ポンピドゥーセンターのユニークな活動を多彩なインタビューと数々の展示空間で紹介します。
そしてそれらのインタビューは、私の疑問に答える形で、将来の美術館の方向性を示唆しています。
あなたにとって美術館とは何ですか?
★ご注意ください!!★
このVimeo on demandのムービーはホームユースです。ホームユースとは個人が家庭内で視聴することを目的としたものです。ホームユースは著作権処理済みのものではありませんので、図書館や美術館、学校教育機関などの公共施設では使用できません。ホームユースをライブラリー版としてご使用になりますと権利者の許諾のないものを使用していることになりますので、ご注意ください。詳しくは、弊社ホームページをご覧くかお問い合わせください。
https://www.ufer.co.jp/education/index.html

What has the museum space offered me?
This is the simple question that I have been pondering. When I was a child I went to the art museum sometimes. All I remember is the exhibition spaces, the large doors and the big rooms. I don’t remember the art works. Perhaps, the making of “OUR MUSEUM” was influenced by these early impressions.
“OUR MUSEUM” is a study of museums today with a look back on the history of the Kyoto Municipal Museum of Art and the Musee d’Art Moderne de la Ville de Paris. Also included is a presentation on the unique activities at the Gallerie Nationale du Jeu de Paume, the Palais de Tokyo, and the Centre Georges Pompidou. There are several interviews with various directors, curators and others working at these institutions as well as exhibition space footage. One of the key questions explored in the interviews is the future direction of art museums.
What is a museum for you ?

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https://www.ufer.co.jp/order/english.html

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