HLGはこの10年で最も優れた映像技術

 8月は3回に分けてVLOGでHLGの現状の使い方を紹介しました。(2020でなく709)のプロジェクト、タイムラインでの方法と効果についてまとめたが、さすがにマニアックで反響は今ひとつです。HDRは現在のテレビにとって最後の高画質を補完する技術で、正確に良さが伝わればお茶の間に8Kよりも普及すると思っています。
  8Kは100インチのような大きい画面で見ないと良さが体感できないと思いますが、そんな大きな画面で見る人はほとんどいませんし、むしろそれはプロジェクターの領域です。それよりも人の目に近い暗いところから明るいところまでを見せるというダイナミックレンジを広げたHDR技術は、色空間そのものが広い技術で、あとはモニターとコンテンツのクオリティーとコストの供給バランスの問題のように現状は思えます。

 私自身もHLGを使い出したきっかけは、FS5のアップデイトでした。同じカメラなので大した違いはないだろうと思いつつテストしたHLGでしたが、新しいカメラを買った気分になって得したように思えました。そのくらい凄く優れた技術だと思っています。まだあまり試しておられない方は是非下記の動画をご覧いただいて、もしあなたが、自分の事を映像クリエイターとかビデオグラファーとか内心思っているのであれば尚更「こりゃちょっとやらんとやばい」という気分になって頂けると思います。

HLGを使う編集ソフトの遍歴

 私はFinalCutProをバージョン2の頃から使って、勿論v.7まで使っていたのですがv10が出てきた時に、これはいただけないと思ってPremiereに切り替えた多数派の映像制作者なのですが、CS6の次のバージョンがクラウドとアナウンスされた時に「毎年税金のように課金されるのはごめん」という気持ちと「同一シリアルで2台までしか使えないケチなソフト」という事で見切りをつけました。当時「FCPX使ってるけど結構私は好きやで」という某有名スイス人アーティストの話を半信半疑で聞いて、ちょっとやってみても良いかなと使い始めたのがFCP10.2の頃でした。そこそこアプリとしては業務用に耐えるものになっていたのと、購入すると自分のIDのMACには何台でもインストールできるという素晴らしいライセンスに、やっぱこれしかないと思い、積極的に使うようになりました。切り替えてゆくには平行して使う期間もあったりして半年以上かかったように思います。もともとPremiereを使ったのは、Blu-Rayが出てきた頃にアップルはもうディスクはいらんやろという無謀なコンセプトでDVDを制作していたDVDStudioProを終了してしまって、仕方なくBlu-Ray制作ではEncoreをCS4くらいから使うためにPremiereを1人で2ライセンス買っていたのでした。当時のEncoreはひどいもので「原因不明のエラー」というアラートが多発して停止してしい、どこが悪いかもまったくわからないまま最初から構築をやり直すという粗悪品でした。CS5になってまあまあ使えるアプリになって、CS6で安定してきましたが、それでもまだまだ不満はあって、込み入った2層のDVDのオーサリングではエラーが出てどうしようもなく、結局DVDStudioProを使った方が歩留まりは良いというようなものでしたが、MacでBlu-Rayを構築するには業務用としてはEncoreしかなく、しぶしぶ使ってきたのですが前述のようにPremiereがクラウドになって使わなくなったので、どうしてもBlu-Rayを構築する時だけに使っています。現在のOS、Mojaveでもちゃんと動くようです。とぃぅ訳で、回りくどくAdobeの悪口になってしまいましたが、映像編集には再びFCPを使うようになりました。

HLG時代の到来

HLGの話に戻しますと、FS5やGH5にHLGが搭載された2017年当時、まだFCPは正式にHLGには対応していませんでした。

2017/11/29 に公開したVLOG 191
FS5のPPをチェックしてPP10がどう見えるかを最初に検証したもの

FinalCutProのHLGの対応

 対応したのは10.4からで当時のFCPは10.3でした。しかし私はその結果が知りたいのでフライングで709のタイムラインにHLGの素材を突っ込み数々の検証をしたところ、「結構使える」ことが分かったのです。

フライング後に10.4で検証したもの

 ここまで読んでるマニアのあなたならきっとご存知の事だと思いますが、カメラを作っているメーカーとしては、あくまでHLGは2020のHDRの素材として開発されたので、それをセオリーとしていて、709で混在さすなんとことはどうせフルの効果も出ないので・・と思っていたようです。しかし実際には思っていた以上の効果がありました。FS5にはHLGの設定の中に709も選べるようになっていて、それで撮っても効果があることが分かりました。

HLGの709のHDR感が凄い
HLGの709設定が何なのかという事をSONYに尋ねてみた返事

AppleのHLG正式対応

 そしてFCP10.4になって正式にアップルからFCPがHLGに対応したよというアナウンス(https://support.apple.com/ja-jp/HT208229)も出て(僕の記憶では2018年暮。記事の日付は2019.1月末になっている)、正式なHDRのとしての使い方は勿論プロジェクトごと2020で作って全て2020でやるということが前提になっていました。がしかし、アップルは既存の素材と混在さして使いたいユーザーも多いだろうし、完全に制作プラットフォームを別枠としてしまうと、普及もままならないという、かつて消滅した3Dの経験を横目で見ていた勝者として、やっぱいろいろ使えるようにしようと、709のプロジェクト、タイムラインでも2020で撮ったHLG素材に一振りするとさっと使える「HDRツール」というのをイフェクトとして付けて来ました。
きちっとしたHLGの素材(明るすぎたりしない)であれば、これを充てがうだけで2020の素材が709の素材のように表示されます。であれば最初から709で撮っとけばと思われるかも知れませんが、そこが少し違います。2020の色空間は輝度、彩度ともに幅が広いので、709のタイムラインに入れると高輝度はより高輝度に、派手な彩度はより派手にになります。ただそれらは飛んでいめる訳ではなく、幅がより広がっているので、編集で露出やサチュレーションをさ触るとより幅広くコントロールできるのです。言葉ではなかなかそれがどういうものかが伝わらないので、最近になって興味を持っている方も多いのでFCPのワークフローをまとめたのがVLOG_341です。

スタンダードの設定と比較したものがこちら

 GH5の場合、HLGは10ビットでないと撮れないのですが、FS5は8ビットでもHLGが使えます。HLGが8ビットではどうなのか、2020と709とスタンダードで撮った違いを比べながら、バンディングが8ビットでも出ない事を検証したのがこちらです。

私がHLGを使う理由

 如何でしょうか。色味の濃さ、再度を高めて強調するような演出が必要だったり、白飛びを抑えながら暗いところのディテールをしっかり見せたいというような用途に大変向いています。勿論、普通に撮るより一手間かかりますが、Logで撮るよりは扱いは簡単です。HLGも一つのLogガンマなのですが・・。ビットレートを上げたり、RAWとか4:4:4:4とかとにかく重量ファイル化に進むのではなく、軽く良いものが撮れてしまうというのは悪いことではないと思います。
 私もしばらくの間、これを仕事で使ってもも良いものかどうか悩んだ時期もありましたが、BBCのドキュメンタリーでこれはHLGを使っていると思う番組があったので、それ以降、やっぱHLGでないと将来の素材として勿体ないなと思うようになって、現在はほとんどの素材をHLGで撮っています。
 ですので、HLGは特別なものでなくこれからのもので、モニターなどの全ての環境が2020になった時には普通の素材として、現在の709の素材は古臭い昔の素材に感じると思います。HDが出て来た頃、SD素材がぼやけて見えたあの状況が今じわっと来ています。解像度は1920でほとんどの人は満足していて、まだまだDVDのレンタルもある世の中ですが、8Kに進まずHLGでクオリティーを上げてみせるというのが本流ではないかと思っています。

メーカーへの期待

 メーカーもここんところを早く理解した所が残ってゆくように思います。webで詳しいHDR解説をして、普及にも力を入れているEIZOや、小型カメラにもHDRを入れてきたDJIなどにも期待しています。ソニーはαなどの民生機にも搭載を始めてますし、逆に業務機ではまだ行き渡っていないのが現状です。
これは映像がテープからメモリーに移行したと同様の革新的な技術ではないかと思っています。今まで高価でないと表現できなかったことが安価にできるという技術なんですから。

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