動画制作用のモニターとして BenQ SW271

 ブラウン管の時代から映像編集には画質のしっかりしたモニターを選ぶべきというのは変わりませんが、仕事で映像制作をする時にモニターのにコストをかけても、実際に個々の制作の画質が改善されたり納品物自体の画質が良くなったりする事は直接的には無いと言えるかも知れませんし、実際にモニターにコストをかけるのであれば他の機材に回した方がクオリティーを上げられるというレベルもあると思います。ただ正確な色や輝度の再現が必要な場合はリファレンスになるモニターが必要不可欠です。

 私はテープ時代には主にソニーの業務用のモニター、ノンリニアになってからはEIZOのFlexScanとNECのカラーマネジメントモニターを使って来ました。どちらの製品も割と長く使えて経年で目に見えた問題は出て無かったのですが、FlexScanの異なる型番を並べて使う様になってから色味によってかなり異なった色になる事が分かって、調整をして揃えようとしたのですがうまく行かなかった事と、これまでHDRに対応したモニターを使っていなかったので、この際リファレンスになるモニターにプレビュー用を交換する事にしました。

悩むモニターの機種選定


 パソコン用のモニターとしては実に多くのメーカーから様々な機種が発売されていますが、映像制作用として販売されているものはそれほど多くなく、評判などを考えると今まで通りEIZOか、最近定評のあるBebQかということになりました。どちらのメーカーも動画用のカラーマネジメントモニターとしては27インチのものがあります。EIZOのCG277はキャリブレーションセンサーを内蔵していて良さそうなのですが、4Kでなく2560 x 1440であるのと、HDRに対応しておらず、発売されてしばらく経つので価格は安くなってはいるものの19万円くらいします。また4Kに対応している動画用としては24インチのCG248-4Kというのがありますが、24インチで4Kだとかなり文字が小さくなってしまうかなと思いました。逆に31.1型 HDRリファレンスモニターとして登場したCG3145-BSが良いのでひょいと変えれば、それに越した事はないのですが、300万円というお値段です。ですので、EIZOには今これが良いというものが無かったのです。それで業界で最近人気の出て来ているBenQについて調べたり知人の意見を聞いてみたところ、「真面目にモニター作っています」という事を教えてくれた人がいて傾きました。

真面目なBenQのモニターとは

 スペックを調べると映像制作向けは27インチWQHD (2560 x 1440) のPV270という機種があって、いろんな人がレビューをして「良い」コストパフォーマンスも良い!と言っています。確かに良さそうなのですが、これも4KでないのとHDRには対応していない事が気になりました。それで4KでHDRにも対応している機種となると、写真制作用として発売されているSW271というものがあって、スペック的には良さそうで、なぜこれが動画向けと書いてないのかがよく分からなかったのですが、スペックは10bitで4Kだし、動画用としても良いのではないかと思えるスペックなので、270よりは少し高いのですがこれに決めました。

SW271の大きい梱包が届く

 NECのカラーマネジメントモニターも27インチのものを持ってますが、これが送られて来た時も大きな箱に入って来ました。それは台座が最初から取り付いていたので当たり前なのですが、今回のBenQのSW271は台座は分解されていたのに大きい箱に入って来ました。理由はスタンド部が大きいのと、フードが横向き縦向け用の両方が付属していてその枚数が多いのと1枚1枚重ならないように入っている箱が入っているので、内部でそれらが結構の体積をとってました。実際のモニター部はベゼルが薄く厚みも薄く作られているので、これまでの24インチのモニターと変わらないくらいのサイズです。

大きい梱包の開梱からセッティングまで

組み立てとセッティングで約1時間半

MacProに3台のモニターを接続
 そもそもこのモニターの買い替えに至った経緯としては、FinalCutProの2モニター表示にしてタイムラインを少しでも長く表示させる事をしたいと思う長編の編集を始めた事が発端です。それで手持ちのFlexScanを2台横並びにしたらその色の違いが気になりだして、しっかりグレーディングするにはリファレンスが無いと二度手間になりかねないと思ったのがきっかけでした。ですので今までは出力の確認用に4KのプレビューモニターとしてPHILIPSの40インチの4Kモニターを接続して見ていました。MacProは標準でマルチモニターに出力する機能があるのですが、少し癖がありthunderboltからDVIやHDMIに変換した場合は2画面までしか表示が出来ません。なので1台はthunderboltからディスプレーポートに接続しないとならないのですが、SW271はミニディスプレーポートしかなく、MacProからは両端ミニディスプレーポートのケーブルが必要なのですが、手元になく今回はHDMIで接続してタイムライン用のFlexScanはDVI、PHILIPSはディスプレーポートを使って接続して3画面表示にしました。

 Macの電源を落として再投入した時にどうしても認識のタイミングのためか、SW271の方がメインモニターになって、Macのメニューバーが付いてしまうのですが、メニューは文字の大きいHDのFlexScanで見たいので、再起動の度に設定をいちいちしている今日です。(覚えさす事は出来るはずですよね?)

FinalCutProで利用してみた印象

 最近709用としてHLGで撮ることが多くて、実際に2020でHDRにした時にどう見えるかはいつも気になっていたのですが、SW271には色空間を選ぶメニューが付いていて、付録で円形のマウスのようなダイレクトスイッチもありますので、これを使えばAdobeRGB、sRGB、rec.709への切り替えは簡単です。
 実際に素材の確認でフォーカスをチェックする時なども繊細な描写で広角のフォーカスも完全なものとそうでないものがよく判ります。ただ解像度を4KにするとFCPのウインドウの周りに付いたメニュー文字がかなり小さくなるので、FCPの方で文字のサイズをモニターごとに切り替えられるような設定にしてもらえればと思いますし、それは既に必要だと思います。
 2020のHLGで撮ったものをHDRで見ると高い輝度の部分まで再現されて全体が艶やかなになります。ここまで明るくなくても良いと思えることもありますが、強い光を表現したい時などにはインパクトがあるのと、当然輝度幅が広いのでダイナミックレンジが広く、これに慣れてしまうと白く飛んだ空は古臭い感じがして来ます。という事は今からHDRのテレビが普及する事を見越して撮影はHLGで撮っておかないと・・となります。3Dテレビの様にフェードアウトしないように業界の皆さん、是非HLGを使いましょう!

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