姫路市立美術館の志村ふくみ展

 この展覧会は本来2020年の春に開催予定されていましたが、コロナ感染症の影響で2020年7月4日〜8月30日に延期されたものです。展示作品の全てが展覧会の動画アーカイブとして公開されています。また当初予定されていた講演会が中止になって、全てビデオレクチャー、動画配信でのギャラリートークという形ににりました。展覧会は前期後期で作品の入れ替えがあり、約100点の作品が展示されました。その全てを展示構成も含めて映像化しています。
 志村ふくみさんの作品は色もデザインもとても繊細ですが、そういう部分まで展覧会場に行けなかった方にも感じとっていただけるものにすべく制作しました。ここにある色が全て植物から採られた天然の色で、長年に渡り緻密な制作をされて来られた歴史が展示されていました。

姫路市立美術館 特別企画展「志村ふくみ いのちを織る」
前期(2020年7月4日~8月2日)展示アーカイブ
姫路市立美術館 特別企画展「志村ふくみ いのちを織る」
後期(2020年8月3日~8月30日)展示アーカイブ

 志村ふくみさんご自身はお元気にされている様ですが、ご高齢であるため会場へ来られる事を控えられて、代わりにビデオメッセージをご家族に撮影いただいき、過去の映像を交えました。

志村ふくみ氏 展覧会「志村ふくみ展 いのちを織る」へのメッセージ」

 志村ふくみさんの作品やコンセプト受け継がれておられます志村洋子さん、染色のブランド、学校の運営をされています志村昌司さん、志村宏さんにも会場で作品や志村ふくみさんについてのお話をしていただきました。

志村洋子氏「志村ふくみの仕事―縞の魅力―」①
「志村ふくみの仕事―縞の魅力―」②
志村洋子氏「志村ふくみの仕事―縞の魅力―」③
志村昌司氏「志村ふくみの生き方―命を染めて、命を織る」①
志村昌司氏「志村ふくみの生き方―命を染めて、命を織る」②
志村宏氏「志村ふくみの生き方―命を染めて、命を織る」①
志村宏氏「志村ふくみの生き方―命を染めて、命を織る」②
志村宏氏「志村ふくみの生き方―命を染めて、命を織る」③

 美術史家の高階秀爾さんと佐治ゆかりさんのお話しとレクチャーです。高階秀爾さんは志村ふくみさんの芸術に大変高い評価をされているおひとりです。大原美術館の館長室で志村作品の芸術性等について詳しくお話しを伺いました。
 佐治ゆかりさんはご自身でも染色と織りを学ばれました。美術史家としての専門的な視点でありながら分りやすいギャラリートークとレクチャーです。

高階秀爾氏「草木の心、生命の歌―志村ふくみの芸術―」
高階秀爾氏「草木の心、生命の歌―志村ふくみの芸術―」(ロングバージョン)
佐治ゆかり氏「言葉が触れる、色の彼方」①
佐治ゆかり氏「言葉が触れる、色の彼方」②

 そしてこちらが2014年11月に志村ふくみさんが京都賞を受賞され、記念ワークショップの為に高階秀爾さん監修で制作しました「つむぎの思想」という映像です。2016年に劇場公開用を制作して、京都国立近代美術館、世田谷美術館、沖縄県立美術館の展覧会場での上映、モントリオール国際芸術映画祭のコンペ部門への入選など多くの方にご覧頂き、今回の姫路市美術館でも展示会場内で展示上映されました。
 制作時に依頼がありましたのは、志村さんの芸術性を言葉で表すにはとても長く語る必要があるので、それを映像化して分かりやすく表現してほしいという難題でした。

つむぎの思想 ―志村ふくみの世界

 制作から既に6年経ちますが、今回会場で改めて見ました。志村さんの制作風景と志村さんが様々な影響を受けられたと言われる自然と自然の色は、この映像作った時にも増して熟成して、この現代に訴えるような気がしました。会場に機織の音が響きながら作品を鑑賞していただける空間でした。最初に紹介しました展覧会アーカイブは、その音も収録しています。

 近年インターネットとスマートフォンで手軽に動く映像が見られるようになって、何でもが「動画」に集約されつつありますが、テレビをはじめ本来記録されるべき映像が丁寧に蓄積されて来たかは疑問の多いところです。私は美術を専門にふり返れば30年近く映像制作をやって来て、今年ほど映像の付加価値が高くなった事は無かったのではないかと思っています。であるならばさらに質の高いものを提案して作りたいというのが制作者の想いです。その中で今まで自作ではやっていました展覧会の入り口から出口までの全作品を映像でアーカイブするという事を、美術館として行ってそれを公開するということが今回実現しましたので、ここにまとめを作りました。
 ネットでの公開となると作品自体の著作権をクリアする必要がある事から、全てを公開出来ないケースもあって、これまで他の美術館でもアーカイブを作成しましたが、全てを見せるのは館内の公開に留まっていました。図録以上に作品の質感も伝わり、ファンの方は勿論、様々な方に資料としても活用いただけるものになっていると思います。この機会に是非ご覧いただければと思います。

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