My Art Today
Blogしばらくご無沙汰してしまいました・・。Artネタをまとめて。
金沢21世紀美術館の15周年 現在地
3年ぶりに金沢に行きました。
3年くらい前までは撮影や作品設営などで割と長い期間滞在する事もあったのですが、すっかりご無沙汰していました。新幹線が出来てから更に混み合う美術館になってる事も聞いてたのでわざわざ出かける気にもなれなかったというのが正直なところ。でもこの15周年の展覧会は全館全てコレクションで構成されてる事もあって見たいけどどうしようかと思ってたら、出品作家の柳瀬安里さんに誘われて、ちょっと引っ張られるように出かけました。
まずは3年ぶりに「あげは」へ
既に3年前には行列の出来ていたこのお店は、その後ニューヨークタイムスなどでも紹介された事などもあって、長蛇の列が出来るお店になっていたそうです。その為看板などを目立たなくしたそうだが、実際11時半のオープン30分前には10人程の列が出来ていました。台風前で空いているかと思ったのですが、2回戦には入れそうだったので並んで待つ事30分。昔は昼休みにふらっと行って食べられたんですけどね。
相変わらず話好きのおっちゃんは、待ってる人が大勢居るのにマイペースでオーダーをゆっくり料理。今回は奮発して海鮮御膳。酢飯の丼に海鮮饅頭と揚げ立てのハンペンと味噌汁。やっぱりコスパで人気の「あげは御膳」でも良かったかと思ったけど、香箱ガニも付けてもらってお腹いっぱいになりました。
柳瀬安里作品の展示
夕方からの内覧会までに既にオープンしている「現在地 1」のパートを見ようと早めに到着したら丁度プレスツアーが始まるところで参加しました。その様子はVLOGでも紹介していますが、今回は柳瀬さんの作品の展示コンディションのチェックが仕事。コレクションの映像作品をとにかくたくさん見せたいのはわかるけど、上映会スタイルで見せるには少し無理がある展示スタイルで、壁面2面を使って左右交互に上映されて行くシステムは照明などもシンクロさせてインスタレーションぽくしているものの、画面サイズが大きいサイズを希望する作品に引っ張られていてコントラストの出ていない映像が多く、音声も反響が大きく言葉のある作品は不明瞭なために内容を聞くには良くない展示でした。画面の部屋のサイズに対しては大きすぎて、かなり見上げる形で全てを見ようとすると2時間半ですので、身体的にもきつい展示でした。映像作品というくくりで平均的な設えで見せるのはそれぞれの作品が作品として成立しているかは疑問が残ります。とりあえず見せたという程度になってしまったのが残念でした。
映像作品が作品として成立して展示される事をサポートする仕事をしていますのでこれでも優しく表現したつもりですが、もし自分が仕事で関わっていたら、この展示は受け入れられないなと思いました。
その他の「現在地」の展示
見て回って感じたのは「よく集めたなぁ」というのが率直なところで、他の国内の美術館でこれだけ充実したコレクションをこの15年で集められたところは無いのではないだろうかと思います。これは単に蒐集だけが活動ではなくて、展覧会や様々なプロジェクトを通して今を生きる作家とともに作られたものも垣間見られるので感慨深いものがありました。仕事で夜中にメールを送っても返事が来たり、設置のために滞在した時には深夜でも学芸室は明るく電気がついていて、夕食も食べずに働く日々が続く環境は、若くて美術が好きで無いと務まらないなぁと思って「不夜城」と個人的に呼んでいたことを思い返してました。そのくらいこの美術館は訪れる人の数だけでは語れない活動があるように思いますし、今後もブラックにならない範囲で活力が育まれてほしいものだと思います。
連休になればチケットブースは長蛇の列で、最後尾と書かれたプラカード持った係員の人が案内をするという地方都市の美術館はなかなか見られない光景がこれからも続くのだと思います。
瀬戸芸の春会期
今これを書いている時点でもうすぐ秋会期も終わって瀬戸芸の4回目、2019も終わろうとしています。2010年の初回、森村泰昌さんが田中敦子さんの電気服になった映像作品を出品するというので女木島で設置をしたのが、初めての瀬戸芸でしたが、設置にしか行かなかったので、他の人の作品はあまり見ずに、杉本博司さんのダジャレのインスタレーションの撮影、ビル・ビオラのモニターの調子が悪いので手伝ったり、ジュン・ヤンの動画コマ落ちを何とかしたり、島の中で起こる展示トラブルを解決しながら夕方のフェリーに間に合わすというベネチアみたいな所だなと思いながら、夜は高松の魚市場 小松で瀬戸内のお魚をいただくという思い出が始まりでした。でもどちらかと言えば出品作品は見慣れたものが多くてそれほど美術展として魅力のあるものでは無いなぁというのが初回の印象で、その後も展覧会だけを見に行くという事はなく、撮影などでピンポイントに出かける事はあっても、ツーリストになっていっぱい作品を見るという意欲はまったくありませんでした。ところが今年2019年の4回目は、昨年の小豆島アートプロジェクトがギャラリーごと瀬戸芸に公式参加するということになって、私自身も出品作家になってしまったので、やっぱりせめて小豆島くらいは見ておかないと・・という気になったところに、オープニングイベントの関係者ツアーの案内が来てしまったんですね。2日間の日程でチャーター船で連れて回ってもらえるということもあって参加してみる事にしました。一緒のギャラリーに出している他の人はみんな都合が悪くて一人で参加したのですが、同じ船に以前金沢21世紀のキュレーターで今は京都精華大の副学長になられた吉岡恵美子さんと学長のウスビ・サコさんがおられることが分かって楽しい日程になったのをVLOGにまとめています。関係者のツアーには参加アーティスト、美術館や大学関係者、国内外からの観光関係者、芸術祭への協賛会社の方など様々な人が乗り合わせていました。ツアーの案内は高松市の芸術祭担当の方と小エビ隊のボランティアスタッフで、作品の案内以外にもいろんなお話を伺う事が出来ました。
瀬戸芸の秋会期
結局春会期はその3日間だけで、夏は行けず、先日秋に2日だけ再び行って来ました。今回はツーリストとして、なるべくたくさんの作品を見られる様に計画して回りましたが、少しトライアスロンのように次から次に移動する感じで瀬戸内本来のゆっくりした雰囲気を味わうこともなく2日間見られるだけ見た様子をVLOGにまとめました。1日目は、大島、男木島、女木島に行きましたが、最後の女木島では、高松に帰るフェリーにこの秋最大の乗船があって150人くらいが残されて、高松から再度往復してくれる船「めおん2」を待つという、瀬戸芸特有の貴重な体験もしました。2日目は豊島の一部と犬島に行きました。豊島だけでも作品が多く点在しているので1日では難しいので、今回は唐櫃岡に絞ってまわりました。中でもボルタンスキーの「ささやきの森」という作品を見るにはちょっとしたハイキングで往復約40分の道のりでしたが、1日目に見た大島の鴻池朋子さんの作品でも遊歩道を歩いて鑑賞するという作品で、これらのコンセプトはやはり身をもって体験するという意味で瀬戸芸によく似合った作品に思えました。現在長崎に巡回開催していますボルタンスキーの展覧会でも同じ作品が出ていますが、展示室で見るのはまったく違う作品に感じますし、これがやりたかったんだという事が分かりました。
犬島精錬所美術館
最後に行った犬島ではやはり精錬所美術館が印象的でした。特に最後の展示室におられて語り部のおばあさんのお話が良かったというか凄かったです。はっきりとした物言いで、口調はトトロ等のアニメに登場するおばあさんの様に何かを悟った感じがあって「見るだけでは何にもわからんよ。知らんやろ?」とその歴史に自分の幼少期の記憶を交えて語られ、美術館の建築構造や素材についても話しかけられる。・・もはやパフォーマンスというか作品化してました。(館内は残念ながら撮影禁止のために映像はございませんが、美術館としてこの観客との対話は自然な形で記録しておくべきだと思います。)
とにかく瀬戸芸は作品も増えてどんどん大きくなって来ています。もう全体のコンセプトをどうするかなんて規模では無いようにも思います。次回はまだ行ったことのない島に行ってみたいと思います。