27回モントリオール国際芸術映画祭

今回は久々にモントリオールだけの滞在で映画祭The 27th International Festival of Films on Artを過ごす。今年も来るかどうか迷っていたが、アスリートが国際試合に出かけて得るものが大きいように、海外の観客を前に自作を見たり、他の作品や参加している監督たちから得るものが大きい。言わば勉強のために2週間を費やし強化合宿のようなものだ。現在の私の制作にこの映画祭で得たものが自覚しないところでも大きく影響して来たと思う。

今年は賞の対象になっているコンペ部門と公式上映のパノラマではあまりその差を感じることができなかったが、審査員賞をもらったBORIS RYZHYは多様な映像言語とその描写力によって、ロシアで自殺した若い詩人について描く。彼の故郷を訪れてインタビューを繰り返すことによってロシアにおける若者の自殺ということを起点に現代の問題点を掘り下げている。これだけ暗く重いテーマについて、見る者を深く消沈させるほどの映像で語る。相変らず凄いサブジェクトとやっているこの監督のアリオナ自身にも興味をもった人も多いのではないかと思う。

 対照的に明るくほほ笑ましい作品にも良いものを見つけた。ニューヨークのアートシーンでは既に有名になったコレクター夫妻を描いたHERB AND DOROTHY。監督は日本人。作品はアメリカからの出品とされている。ジャッドやチャック・クローズの作品を駆け出しのころから購入し、彼らのアパートに貯まった目利きの作品群を高齢になったために、最後はナショナル・ギャラリーに寄贈するという何ともいい話。ニューヨークのアート界では誰もが知る彼らについて、クリスト夫妻は「私たちは忙しくてなかなか展覧会を見て回れないけれど、彼らと一度食事をするとニューヨークの一年間の出来事が一晩で理解できる」と語る。それほど熱心に見て回る彼らは決して上流階級のコレクターではなく、アメリカの普通の庶民。アパートに納まる作品は彼らの居住スペースに溢れる。この映像では彼らの行動やこれまでのコレクションを振り返り、彼らと親しいアーティストのインタビューなどで詳細に語られている。私の中ではこの作品が大賞でも良かったのだが・・・。
オープニングでこの映画祭創始者のレネ・ロゾン氏と
 その他に興味を持ったのは、ドバイのアート事情を追ったCULTIVATING THE DESERT、サムフランシスの生涯を描いたTHE PAINTER SAM FRANCIS、カルダーのドキュメンタリーCALDER, SCULPTEUR DE L’AIRは今までに見た昔の映像の引用が多くそれほど新しさを感じなかったがやはりカルダーは良かった。BBCのRICHARD SERRA: MAN OF STEELは、セラ自身の話などは面白いがBBCの脚色で出てくるいつものおじさんがちょっとつまらない。お宅探訪ではあるまいし。もうちょっと大人の演出が出来ないものか。WDRは相変らず飛んだ作品も出していて、そのタイトルもHITLER’S HIT PARADE。プロパガンダが映画によって如何に行われたかを当時の映像を淡々と繋いで見せる。解説などは一切無く、見るもののリテラシーを揺さぶる構成はさすが。日本ではこういう映像をテレビで流せる日は来ないだろうと確信する。
 今回の映画祭のポスターにもになっていたジョルジュ・ルースのアメリカでのプロジェクトをドキュメントしたBENDING SPACE: GEORGES ROUSSE AND THE DURHAM PROJECTは、実行委員会が作った感じのものだが、映像はなかなか凝った作りになっていた。ルースは相変らず黒いポロシャツと黒いジーパンでボランティアとコミニュケーションをとりながらの制作。モントリオールでも展覧会があったので知名度が高く、今回は上映と共にプロジェクトの報告会のようなものも開かれていた。
 その他にも書ききれないが、今回は39本見た。この質と量はやっぱりここでしかない。8回目のモントリオールは時期が10日後になったこともあって、本当に暖かだった。MORIMURA C-0の上映もCINDY SHERMANと同じ枠の上映だったためか150人くらい入る現代美術館のホールほぼ満席。夜9時からという上映でも大勢集まるのは、嬉しいを通り越して羨ましい。
 出発前に風邪を引いてそれを引きづりながら来て、しかもラゲージのミスハンドルで2日も荷物が届かなかったところから始まった滞在は、12年前に初めてこの映画祭に参加したときにボランティアをされていて、それ以来御世話になっているKさんや、常連さんたちのおかげて徐々に充実したものになった。来年は3月18日から開催らしい。

MORIMURA Chapter 0 森村泰昌 Yasumasa Morimura from Ufer! Art Documentary on Vimeo.
1.MORIMURA Chapter0 Barco negro na mesa + Five Water Towers
2008年 27分 第27回モントリオール国際芸術映画祭参加作品
1984~85年制作の「卓上のバルコネグロ」、そしてこのシリーズの中の「水の塔」をもとに2007年に制作した立体作品、さらに両作品を白と黒の市松模様の空間にまとめたインスタレーションは「卓上のバルコネグロ+五つの水の塔」と題され、2007年に金沢21世紀美術館で展示された。
発想から制作までの一連の過程と作品への想いを森村自身の語りで伝え、映像はインスタレーションの全貌を映しながら、森村の表現活動への姿勢を捉える。

………………………………
2.モリエンナーレ/まねぶ美術史 2012年 31分
モリエンナーレとは? 美術史を公的な一般論的なものとしてとらえるのではなく、私的な個人史で語ることによって、等身大の美術史を見つけ出す。「私美術史」の実現、これを等身大をはるかに超えた規模で展開する昨今のビエンナーレやトリエンナーレをいささか皮肉るスタンスで「モリエンナーレ」と称してみたい。(森村泰昌)
この映像は2010年に高松市美術館で開催された「モリエンナーレ」が、2011年にふくやま美術館に巡回した時の会場記録と共に、森村泰昌のインタビューを交えてまとめたものである。

JPWiMAX

………………………………
3.美の教室、静聴せよ 2012年 35分
熊本市現代美術館と横浜美術館で2007年に開催された「美の教室、静聴せよ」では、森村が自ら解説する無料の音声ガイドプレイヤーを鑑賞者が聞きながら展覧会を観るという形式がとられた。
この映像は横浜美術館での展示風景を音声ガイドで使われた音声の一部と共にまとめた記録である。 初期のゴッホから当時最新のミシマまでを語った。


★ご注意ください!!★
このVimeo on demandのムービーはホームユースです。ホームユースとは個人が家庭内で視聴することを目的としたものです。ホームユースは著作権処理済みのものではありませんので、図書館や美術館、学校教育機関などの公共施設では使用できません。ホームユースをライブラリー版としてご使用になりますと権利者の許諾のないものを使用していることになりますので、ご注意ください。詳しくは、弊社ホームページをご覧くかお問い合わせください。
https://www.ufer.co.jp/education/index.html

What\'s going on!